一等地にもかかわらず、テナント誘致の進捗は芳しくない様子の「ミッドタウン八重洲」。オフィスビル市況は2023年以降、いっそう波乱含みに。
都心部の中でも開発が遅れていた八重洲エリアにとって、東京ミッドタウン八重洲はオフィス街としてのポテンシャルを占う重要な物件だ(記者撮影)
東京駅の東側一帯の地域「八重洲」。駅舎の目と鼻の先で、三井不動産のオフィスビル「東京ミッドタウン八重洲」(A-1街区)の建設が大詰めを迎えている。地上45階建ての超高層ビルは六本木、日比谷に次ぐ「ミッドタウン」の名を冠し、三井不にとってのフラッグシップ物件となる。
ところが、東京駅前という一等地にもかかわらず、テナント誘致の進捗は芳しくないようだ。
東洋経済の取材によれば、3.7万坪(12万2000平方メートル)と推定されるオフィス賃貸面積のうち、記事執筆の5月中旬時点でテナントが内定しているのは4~5割。2022年8月の竣工を前に苦戦する旗艦ビルの姿は、この2年間で急変したオフィス市況を象徴する。
大手の移転入居は決まっているが
コロナ禍以前、オフィスビル業界は”我が世の春”を謳歌していた。好調な業績や働き方改革の潮流を受け、オフィスの増床や拡張移転に踏み切る企業が増加。都心部のオフィスビルは空室が逼迫し、新築ビルは竣工前に満室となることも珍しくなかった。
逆回転は2020年春、新型コロナウイルスの感染拡大とともに訪れた。外出自粛でテレワークが普及するやいなや、今度は不要になったオフィスの返却や縮小移転に踏み切る企業が相次いだ。オフィス空室率は上昇へと転じ、左うちわだったビルオーナーは一転して、賃料の引き下げや移転しようとするテナントの引き留めに奔走することとなった。
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