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Tuesday, January 11, 2022

4K120p入力で解像度半分になっちゃう問題。TVメーカー5社に聞いた - AV Watch

各社から4K120p対応テレビが発売されている

PlayStation 5(PS5)やXbox Series Xといった、新型のゲーム機が発売されてから約1年。テレビやAVアンプ、サウンドバーなどのジャンルからも、ゲーム機と同じ“HDMI2.1”をサポートする製品が出揃い始めた。

具体的には、テレビはソニー・ブラビア、パナソニック・ビエラ、シャープ・アクオス、レグザ、LGのミドルからトップエンドの2021年モデルがHDMI2.1をサポート。AVアンプもデノン、マランツ、ヤマハが、2021年の全モデルでHDMI2.1をサポートした。

ユーザーにとってはようやく、最新ゲーム機が備える性能や機能をフルに活かしてゲームがプレイできる環境が整ったわけだが、その一方で、国内の口コミや海外のAVメディアなどではHDMI2.1対応テレビに関する“ある事象”が指摘されていた。

それは「4K120pの信号をテレビに入力すると、垂直解像度が半分になってしまう」というもの。

“4K120p対応”と謳ったテレビであれば、4K/3,840×2,160・120fpsの信号をそのまま表示してくれるはずだが、一部のテレビでは、4K120p信号を入力した場合に限り、垂直解像度が半分(3,840×1,080相当)に間引かれてしまい、オリジナルの映像がフルに描写できていない、というのだ。※120p以外の、通常の4K信号は問題なく表示される

そのようなことが実際にあるのか?

テレビメーカーの技術者に話を聞いたところ「4K120pのデータ量は従来に比べて非常に大きく、画像処理の負荷は小さくない。リフレッシュレートを優先する方法としてはあり得る」とのこと。しかし、メーカーのカタログやウェブサイト上の製品、サポートなどではそうした詳しい事が書かれておらず、また口コミなどでも「A社とB社は大丈夫」「いや、B社は半分になる」と情報が錯綜している様子。

そこで、ソニー、パナソニック、シャープ、レグザ、LGの主要テレビメーカー5社に同じ質問を投げ、4K120p入力で解像度が半分になってしまう事象の有無を確認することにした。

そもそも4K120pとは

各社からの回答を掲載する前に、4K120pのことを軽くおさらいしておこう。

そもそも“4K120p”とは、4K/3,840×2,160ドットの解像度を持つ1枚の画像が、秒120コマで構成されている映像を指しており、見た目としては、ヌルヌルと滑らかな映像になる。

とはいえ、映画は秒24コマ、テレビ番組などその他多くの映像が秒60コマでできていることがほとんどのため、120コマの映像素材はかなり限定的だ。現状は、冒頭で登場したPS5やXbox、そしてPCのビデオボードから出力したゲーム映像が、4K120pのメインコンテンツと言っていい。

しかも最新ゲームの全てが120コマになる、というわけではない。120コマにレンダリングできるように設定された、対応のゲームソフトが必要となる。PS5では「フォートナイト」、「レインボーシックス シージ」、「コール オブ デューティ ヴァンガード」、「コール オブ デューティ ブラックオプス コールドウォー」などのゲームが4K120pをサポートしている。

フォートナイト
レインボーシックス シージ

秒120コマに増える分、データ量も倍増する。そのため、4K120pの信号を伝送するには最新規格であるHDMI2.1が欠かせない。またその信号を安定して伝送するために、専用のHDMIケーブル(Ultra High Speed)も用意する必要がある。つまり、4K120p対応のゲーム機、ソフト、ケーブル、テレビを組み合わせることで初めて、4K120pのゲームが体感できる。

環境を構築するためのハードルは決して低くないが、ひとたび4K120pでゲームを体感し、その映像に慣れてしまうと、秒60コマのゲームがカクついているように感じることだろう。さらに、一瞬の判断で勝敗が決まるようなFPS/格闘ゲーム等においては、秒120コマで映像が滑らかになることで、視点移動やフィールド上の物体、敵の動きなどがこれまで以上に見えやすくなり、ゲームの進行にも利点が増す。

つまり、滑らかでリアルな映像が楽しめること、そして快適なゲームプレイが可能になることから、熱心なゲームユーザーほど、ゲームのフレームレート(fps)と、それを表示するディスプレイのリフレッシュレート(Hz)を重視するようになっているわけだ。

PSソフト「レインボーシックス シージ」における、PS4とPS5の比較映像。右のPS5版を観ると、秒60コマのPS4版に比べ滑らかに動いているのが分かる(PlayStation.Blogより)

各メーカーへは、以下の4つを問い合わせた。

  • 問1:御社の4K120p対応テレビに、4K120pのゲーム信号を入力した場合、一部で指摘されているような「垂直解像度が半分になる」症状は確認されていますか。
  • 問2:(問1で「症状がある」という場合)今後ソフトウェアアップデート等で改善は可能ですか。もしアップデートの時期など、具体的な目処があればあわせて教えてください。
  • 問3:(問1で「症状はない」「対策済み」という場合)4K120p信号のフル表示(垂直/水平解像度が原信号と同じ)することで、「HDRにならない」「○○の処理がスルーされる」など、トレードオフになる機能や画質処理はありますか。
  • 問4:御社のテレビで4K120pゲームを楽しむ方に使用上のアドバイス、または購入を検討している方に、4K120p含むゲーム間連機能で強くアピールしたい機能や特徴があれば、お願いします。

ソニー、パナソニック、シャープ、TVS REGZA、LGエレクトロニクス・ジャパンの5社から回答を得た。各社からの回答は、ほぼそのまま掲載している。

なお4K120p対応を示すカタログ表記は、ソニーは4K120fps対応、パナソニック・シャープ・TVS REGZAは4K120p、LGは4K120Hzと、各社で微妙に異なるが、以下の回答では4K120pに統一した。

ソニー:ブラビア

85型4K液晶ブラビア「XRJ-85X95J」

【ブラビアの4K120p対応モデル(現行製品)】
8K液晶:Z9H
4K液晶:X95J、X90J、X85J
4K有機EL:A90J、A80J

問1~3について
技術的な回答は控えますが、4K120pの信号が入力された場合は、ゲームモード使用時の動画表示において、滑らかでちらつきが少ない映像を体験頂くために、最適な映像処理を行なっています。

問4について
BRAVIA XRは、4K120p入力時に8.5msの低遅延を実現しています。また、ソニーグループ内の連携を強化し、PS5との独自の連携機能を搭載しています。

またPS5本体のHDR調整を、モデルに合わせて最適化する「オートHDRトーンマッピング」と、PS5でゲーム以外のコンテンツをご覧になる際に自動で画質モードを変更する「コンテンツ連動画質モード」を搭載。4K120p対応や、低遅延なゲームモードを搭載で、PS5でのゲームプレイに最適なテレビとなっております。

問1~3の回答が不明瞭だったため、もう少し情報を開示して欲しいと再度問い合わせたところ、下記回答を得た。

X85Jシリーズについて、一部地域/一部のシーンで不鮮明であるという指摘があがっているのは認識していますが、4K120pの信号が入力された場合に、Game Mode使用時の動画表示において、滑らかでちらつきが少ない映像を体験頂くために最適な映像処理を行なっており、アップデートの予定などはありません。

なお、「『認識している』とあるのも、『(世間で)そういった事象がある、と言われているのは知っている』という意図で、『半分になるかどうか、ということを認めている』という意図ではありません」(広報)とのことだった。

パナソニック:ビエラ

65型4K有機ELビエラ「TH-65JZ2000」

【ビエラの4K120p対応モデル(現行製品)】
4K液晶:JX950、JX900、JX850
4K有機EL:JZ2000、JZ1000

問1について
’21年11月24日開始のソフトバージョン(Ver.1.124)にて、HFR(4K120p)の入力信号を受けた際、原画を忠実に表示することを優先する設定メニュー「4K120Hzピュアモード」を追加しております。これにより、入力された映像を入力信号と同じ水平/垂直解像度で内部処理を行ない表示するモードで使用することが可能となります。

なお、本モードは上記対象モデルのうちVRR対応のモデルではVRR信号入力時も動作します。

問3について
4K120p入力時には遅延量を最小化するため、ノイズリダクション、シャープネス、色補正など、一部の画質補正機能がオフもしくは固定値になり、PCモニターライクなゲームプレイにおすすめな設定となります。

問4について
4K120pのフル解像度での入出力に対応し、高画質かつ低遅延で最先端のゲーム体験をお楽しみいただけます。

さらにPC用グラフィックボード対応として、AMD社のFreeSync Premium認証も取得。ゲームコンソールに加えて、ハイエンドPCゲームのモニターとしての用途までもカバーしています。

シャープ:アクオス

65型4K液晶テレビ「4T-C65DP1」

【アクオスの4K120p対応モデル(現行製品)】
8K液晶:DX1、DW1、CX1
4K液晶:DP1、DN1、DN2
4K有機EL:DS1、DQ1、DQ2

問1について
当社製品の仕様では、情報量の多い4K120pのHDR映像入力時において、4K解像度の垂直方向を抑えて表示することにより、HDR処理を優先しています。お客様には、取扱説明ガイドにてお知らせしております。

問2について
当社製品の仕様変更につきましては、今後様々な状況を見極めながら検討してまいります。

TVS REGZA:レグザ

4K有機ELレグザ「X8900K」シリーズ

【レグザの4K120p対応モデル(現行製品)】
4K液晶:Z670K、Z570K
4K有機EL:X8900K
※'21年9月公開のソフトウェアアップデートよりサポート

問1について
レグザは、4K120pのゲーム信号を受けた場合、垂直解像度を落とす処理などはせず、リアルな3,840×2,160で出力します。

問3について
低遅延処理を実現するため、4K120pゲームモードにおいては、質感リアライザー、黒レベル、色の濃さの調整はユーザーには解放していません。

問4について
業界最速レベル約0.83msecの低遅延を実現しており、対戦格闘ゲームなどボタンを押すタイミングが重要なゲームを快適にプレイできます。フルスペックの4K120p入力対応はもちろん、VRRにも対応しています。

また、さまざまなゲーム機器の出力モードに合わせ最適な映像に自動調整するレグザ独自の「オートゲームアジャスト」を搭載しています。さらに、音声も業界トップクラスの低遅延を実現しており、音ゲームも快適に楽しめます。

LGエレクトロニクス・ジャパン

65型4K有機ELテレビ「OLED 65G1PJA」

【LGの4K120p対応モデル(現行製品)】
8K液晶:QNED99、NANO96
4K液晶:QNED90、NANO90、NANO85
8K有機EL:Z1
4K有機EL:G1、C1

問1について
そのような症状はありません。複数の2021年モデルで検証したうえで、問題なく4Kで表示されていることを確認しております。

問3について
特にございません。

問4について
プレイ環境やゲームジャンルに合わせて最適な画質モードが設定される「ゲームオプティマイザ」や、4つのジャンル(「FPS」「RPG」「RTS」「スタンダード」)に合わせ映像を最適化する「ゲームジャンル設定」などゲームの世界観により浸ることができる様々な機能を搭載しています。

またLGの2021年モデル(一部機種を除く)では、搭載している端子すべてがHDMI2.1に対応しています。入力端子数も4本あることで、ゲームのみならず周辺機器の数を気にすることなく接続できます。

LGとレグザは事象無し。ビエラは昨年に対策済み

各社からの回答をまとめると、レグザとLGは事象無し、ビエラはアップデートで対策済み(事象無し)、シャープは事象有りという結果だった。ソニーにおいても、“Perfect for PlayStation 5”と呼んでいる「BRAVIA XR」プロセッサ搭載モデルは事象が無いものと推察できそうだ。

また問3については、低遅延を優先させることによるものであり、ゲームをプレイする上で影響はほぼないものと思われる(同じような一部処理のカットは、2K60pゲームなどでも行なわれている)。

PS5やXboxなど、最新ゲーム機をテレビで楽しみたいと考えている方は、事象の有無や各社が用意しているゲーム向けの機能を参考に、比較検討をするといいだろう。

なお、数年前に発売された機器(HDMI2.0/1.4)や4K120p非対応のテレビでも、PS5やXboxでゲームをしたり、ネット動画・ブルーレイを観ることは可能だ。ゲームの頻度が少なく、テレビ番組やネット、パッケージで映画やライブ作品などを楽しむことが多い場合は現状、4K120p入力をそれほど気にする必要はない。

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