総務省が人口減少率などから「過疎地域」に指定する自治体が、全国の市町村の半分を超えることがわかった。過疎自治体が5割を超えるのは1970年の指定制度開始以降初めて。政府は地方創生策を進めているが、地方の衰退に歯止めがかかっていない。
2020年の国勢調査を受け、総務省は1月中旬、過疎地域持続的発展支援特別措置法(過疎法)に基づいて、「過疎地域」に指定される自治体への通知を行った。4月1日付の官報で公示する。
22年度から自治体の全域または一部が過疎地域に指定されるのは、全国1718市町村(東京23区を除く)の51・5%にあたる885市町村。21年4月時点では820市町村だったが、新たに27道府県の計65市町村が指定されることになる。
新規指定のうち、全域が過疎地域となる「全部過疎」は北海道富良野市、新潟県加茂市、熊本県人吉市など36市町村。また、平成の大合併(1999~2010年)前の旧市町村を過疎地域とみなす「一部過疎」は、福島県白河市や千葉県香取市、徳島県阿波市など29市町となる。今回、過疎指定から外れる市町村はない。
過疎に対応するための財政負担は増している。
政府が返済の7割を負担して自治体を支援する過疎対策事業債(過疎債)の費用として、総務省は22年度当初予算案に前年度比200億円増の5200億円を計上。12年度の2900億円から約1・8倍に増えている。今後も人口減少や都市部への集中が続けば増額が避けられない見通しだ。また、財務省によると、地方の債務残高は21年度末時点で約193兆円に上る見込みで、過疎化が財政悪化の要因ともなっている。
歴代政権は、地方活性化を重要課題に挙げて対策に取り組んできたが、成果が上がっているとは言いがたい。安倍政権は14年に「東京一極集中の是正」を掲げて、地方創生担当相を新設。「2020年に東京圏の転出入を均衡させる」ことをめざしたが、実際には転入超過が続いた。岸田政権も同担当相を置くほか、活性化策として「デジタル田園都市国家構想」を掲げるが、実効性は不透明だ。
過疎法は、人口減少率や高齢者比率、財政力指数などに基づき、過疎地域を指定し、過疎債などで支援する。1970年の制定以降に繰り返し改正・延長されており、現行法は2021年4月に施行された。(小泉浩樹)
新たに過疎地域に指定される65市町村
【全部過疎】
(北海道)富良野市、新篠津村、鹿部町、別海町(青森県)田舎館村、鶴田町(宮城県)川崎町、松島町、大郷町、涌谷町(山形県)上山市(福島県)国見町、天栄村、会津坂下町(茨城県)桜川市、河内町(群馬県)高山村(埼玉県)ときがわ町、皆野町、長瀞町(千葉県)九十九里町(新潟県)加茂市(福井県)勝山市(長野県)立科町(滋賀県)甲良町(京都府)綾部市(大阪府)豊能町、能勢町(兵庫県)市川町(奈良県)高取町(和歌山県)広川町、美浜町(高知県)宿毛市(福岡県)糸田町(長崎県)東彼杵町
(熊本県)人吉市
【一部過疎】
(福島県)白河市、須賀川市(茨城県)潮来市、かすみがうら市(千葉県)匝瑳市、香取市、山武市、いすみ市(新潟県)新発田市、胎内市(富山県)砺波市(福井県)あわら市、永平寺町、若狭町(長野県)上田市、塩尻市、安曇野市(岐阜県)海津市(滋賀県)東近江市(京都府)木津川市(兵庫県)丹波篠山市、たつの市(和歌山県)みなべ町(徳島県)阿波市(熊本県)玉名市、菊池市、氷川町(鹿児島県)出水市(沖縄県)南城市
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