カナダに短い夏がやってきた。過去2年、新型コロナウイルス禍で大打撃を受けた観光業は、感染の落ち着きとワクチンの普及で書き入れ時の復活を目指すが、世界的な燃料費高騰など新たな不安材料も。米国との往来が戻ってきた国境の街の様子を訪ねた。(カナダ東部オンタリオ州で、杉藤貴浩、写真も)
◆接種歴確認は省略、それでも3時間待ちの入国審査
国境には、延々と続く車の列ができていた。米国が3連休を迎えた5月最後の週末、ニューヨーク州からカナダのオンタリオ州に陸路で入る「レインボー橋」の入国審査は3時間待ちだった。道中ではしびれを切らしたのか、方向を変えて去っていく車も。
ようやくゲートにたどり着くと、審査はパスポートの提示だけ。規則では事前にコロナワクチン接種歴を入力したスマホの専用アプリ画面も見せるはずだが、係員が「アプリは登録しましたよね」と口頭で済ませるほどの混雑ぶりだ。「毎日こんな渋滞ですか」と尋ねると「いや、この週末からだね」と苦笑された。
カナダはコロナ拡大後に原則閉ざしていた旅行目的の国外からの入国を、昨年からワクチン接種などを条件に段階的に緩和。今年4月には、事前に受けたコロナ検査の陰性証明の提示義務もなくなった。
◆観光は国内5位の主要産業「今年の夏は期待できる」
この日のレインボー橋がひときわ混雑したのは、こうした入国条件の緩和に加え、歩いて行ける距離にある世界的景勝地「ナイアガラの滝」が初夏の観光シーズンに入ったことがある。入国審査を抜けてカナダ側の街ナイアガラフォールズに入ると、滝を見渡せる公園はカナダと米国ナンバーの車と観光客で埋まっていた。
「昨年は営業している店もお客も少なくて、さっぱりだった。今年の夏は期待できる」。土産物店スタッフのエンジェラさんはレジに並ぶ人の列に笑顔。外では滝の真下に近づける遊覧船も満員になっていた。
ナイアガラだけでなく、ロッキー山脈やオーロラ見物、トロントやモントリオールといった大都市など多くの観光資源を抱えるカナダ。同国観光産業協会によると、観光業はコロナ前に約1000億カナダドル(約10兆円)の市場規模を持つ国内5位の主要産業だっただけに、客足の復活は急務だ。
協会は「現在の回復ぶりはコロナ禍前の50%程度」と分析するが、空路でも今年4月のカナダへの国外在住者の旅客は36万人以上と前年同月の20倍となり、コロナ前の水準に近づきつつある。
ただ、ロシアのウクライナ侵攻などの影響で世界的に燃料費が高騰しており、今後の人の流れにブレーキをかける恐れもある。ナイアガラフォールズのディオダティ市長はカナダ公共放送CBCの取材に「北米の半分近い人々が、ここから車で1日以内の場所に住んでいる。われわれにとってガソリン価格の高騰は不安だ」と話している。
関連キーワード
おすすめ情報
からの記事と詳細 ( カナダ、勝負の観光シーズン ナイアガラの滝に人殺到も「まだコロナ前の半分」 影を差すガソリン高騰 - 東京新聞 )
https://ift.tt/1i2LWX7
No comments:
Post a Comment