年金積立金管理運用独立行政法人( GPIF)の最高投資責任者(CIO)を務める植田栄治氏は、ブルームバーグの取材に対し、株式アクティブ運用の有能なマネジャーの発掘に注力する考えを示した。GPIFは積極的に株式アクティブファンドの採用を進めており、これまでの成績については「手応えを感じている」と話した。
植田氏がメディアの対面取材に応じるのは初めて。GPIFは2023年9月末時点で約220兆円を運用する世界最大の年金基金で、投資戦略に対する市場関係者の注目度は高い。植田氏はGPIFが掲げる「運用の高度化」を指揮しつつ、巨額資産運用の中核を担う。
厚生労働相が定めるGPIFの現中期目標(20年度から5年間)では、ベンチマークに対して資産全体で超過収益を獲得するという新たな項目が盛り込まれた。植田氏は「高い確率で勝てるマネジャーをできる限り多く選ぶ」とし、積極的に株式アクティブファンドを採用する戦略で目標の達成に道筋を付ける考えだ。
植田氏は「8割勝てるマネジャーはいないが、超過収益を出せる確率が3分の2のマネジャーが多く集まると、全体のポートフォリオとしては勝つ確率を高められると思っている」と話す。
マネジャー選定の目利きが成否を握ることになるが、GPIFはデータサイエンスを用いて選定に当たる。例えば、500の銘柄群から100銘柄を選んで運用しているファンドの力量を測る場合、500銘柄から100銘柄選んで作ることができる全てのポートフォリオのリターンを日次で計算し、このファンドがどの程度の成績だったかを比較検証する。
500銘柄から100銘柄を選ぶ組み合わせは膨大な数に上る。植田氏は「非常にヘビーな計算で、最新の計算力を持つコンピューターを使っても、1マネジャーの評価をするのに何時間もかかる」と明かす。
過去3年の累積では超過収益確保
GPIFは22年秋以降、北米株と先進国株(除く日本)でそれぞれ19本と14本のアクティブファンドを選び、現在は日本株でも選定作業を進める。
植田氏は日本株での採用の進捗(しんちょく)状況について詳細を控えた一方、これまでのアクティブ運用には手応えを感じているという。アクティブファンドの数を増やすこと自体が目的ではないとしつつ、まだ出会えていない能力の高いマネジャーが「世の中に残されているという感触はある」と話した。
現行の中期目標期間の成績は、22年度までの年度ごとに見れば資産全体で「1勝2敗」と負け越しているが、3年間の累積では超過収益を確保している。
植田氏は「PDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルを回しながら、安定的に超過収益を出せるようにする過程だと思っている。目標達成に向けて引き続き努力したい」と述べた。
植田氏は1991年に東京大学工学部の工業化学科(当時)を卒業後、ゴールドマン・サックス証券東京支店に入社。2019年に同社を退社し、翌20年にGPIFの運用担当理事兼CIOに就任した。
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