このまま気候変動を食い止めることができなければ、今世紀中に世界の砂浜の半数が消滅する恐れがあると、科学者らが指摘した。
イタリア、イスプラにあるヨーロッパ連合共同研究センターの研究チームは、衛星画像を用いて過去30年間における砂浜の変化を辿り、今後地球温暖化が及ぼす影響についてシミュレーションを行った。
ミカリス・ブドゥカス氏は、「その結果、今世紀中に世界の約半数の砂浜で、100メートル超の浸食が発生することがわかりました。これらの砂浜は、消滅してしまう恐れがあります」と言う。
3月2日に『ネイチャー・クライメート・チェンジ』誌が掲載した論文によると、リスクが及ぶ範囲は、2100年までの地球の平均気温の上昇率によって変化する。気温が上昇すればするほど海面水位が上昇するので、一部の地域では暴風雨の威力が増大し、これにより浸食を受ける砂浜の範囲も広くなる。
論文には、3分の1が砂浜である「世界の海岸線は、今後予想される汀線の変化に伴い、大きく形を変えることになる」と記されている。
砂浜はレクリエーションや観光の場であるとともに、野生動物のためにも重要である。さらに、高波や暴風雨の発生時には、沿岸部の住民を守る自然の防御効果を発揮する。
浜辺での建設作業や内陸部におけるダムの建設といった人間の活動により、砂浜をはじめとする沿岸部の広い範囲に、すでに大きな影響が出ている。たとえばダムは、砂浜を再生するために欠かせないシルトが海洋に流れる量を減少させる原因となっている。
研究チームは、とくに大きな影響を受ける国もあると指摘している。西アフリカのガンビア、ギニアビサウでは、60%超の砂浜が消滅する恐れがあり、パキスタンや、イギリス海峡のジャージー島、コモロ諸島にもまた、同様の危険があると予測される。
消失する海岸線の総距離という点では、オーストラリアが最も深刻な影響を受ける見込みで、1万1,400キロメートルあまりが消失する恐れがある。論文では、アメリカ、カナダ、メキシコ、中国、ロシア、アルゼンチン、チリの砂浜でも、数千キロメートルの消失が予測されている。
イギリス地質調査所で沿岸部の危険性と回復力を専門に研究しているアンドレス・パーヨ氏は、研究の手法は妥当としながらも、結論については慎重に受け止めるべきだと指摘している。
「仮定が多く、一般化も多くみられるため、分析結果の質にも数値にも影響を与えている可能性があります」とパーヨ氏は言う。なお、同氏は今回の研究に関与していない。
しかしブドゥカス氏は、砂浜の消滅する範囲について研究チームが算出した数値は、むしろ「やや保守的」であり、さらに大きな数になる恐れもあるとしている。
研究チームは2種類の温暖化シナリオを用意した。一つのシナリオでは、今世紀中に地球の平均気温が摂氏2.4度上昇すると想定。もう一つのシナリオでは、その倍の上昇を想定した。パリ協定では、温暖化を1.5度にとどめることを努力目標としているが、ブドゥカス氏によると、研究チームは達成の可能性は低いとみて、シナリオでは考慮しなかった。
研究チームは、気候変動を引き起こす温室効果ガスの排出量を削減することで、汀線の後退を最大で40%防ぐことができると計算しているが、沿岸部の人口は多く、増加傾向にあるため、住民を保護する対策もまた施す必要があるとしている。
論文では、何世紀にもわたる海との戦いのなかで低地エリアの大規模な造成事業も進めてきたオランダを例にあげ、「過去の事例を見ると、各土地に適した効果的な海岸計画を策定することで、砂浜の浸食を緩和し、海岸線の安定にもつながることがわかる」としている。
By FRANK JORDANS Associated Press
Translated by t.sato via Conyac
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March 14, 2020 at 03:01PM
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