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Saturday, April 25, 2020

圧縮着火のスカイアクティブXエンジン 燃費性能には不満も - livedoor


試乗したのは「CX-30」の最上級グレード「X L Package」(筆者撮影)

次世代の高性能エンジンとして世界中の自動車メーカーが研究開発するものの、実用化には至らなかった「圧縮着火」のガソリンエンジン。それをマツダが世界で初めて実用化したのが、「マツダ3」と「CX-30」に搭載されている「スカイアクティブX」エンジンだ。

従来のガソリンエンジンに対して燃費で20〜30%、トルクで10%ほど向上するという。誰もが夢見た技術をマツダだけがモノにしたという意味では、ロータリーエンジンと同じだ。

いったい、スカイアクティブXはどのようなエンジンなのか。CX-30でその走り味をチェックした。

力強さはまるでディーゼル

スカイアクティブXエンジンを試すために借り出したのは、新型SUVのCX-30だ。言ってしまえば、このモデルはマツダ3のSUVバージョン。マツダ3の発売から約5か月遅れとなる2019年10月に発売され、翌2020年1月よりスカイアクティブXエンジン搭載グレードを追加している。


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マツダのSUV群の中では、最もコンパクトな「CX-3」とミドルサイズの「CX-5」の中間となる存在だ。全高が1540mm、全幅が1795mmというのがポイントで、日本に多い機械式立体駐車場の高さ(1550mm)と幅(1800mm)より絶妙に小さい。マツダの最新世代のアーキテクチャを、日本で使いやすいサイズでSUV化したモデルと言える。

CX-30は年々、質感を高めているマツダ車の中でも、最も新しいモデルだ。そのため、内外装の質感は相当に高い。


パーフォレーションレザーのシートが標準装備となる「X L Package」のインテリア(筆者撮影)

特にデザイン面は兄弟車であるマツダ3が「2020ワールド・カーデザイン・オブ・ザ・イヤー」を獲得したように、CX-30も同様に高いレベルにある。非常に美しいクルマだ。

スカイアクティブXのエンジンはどうかといえば、世界初の先端技術を採用するだけに、これまでにない新しいフィーリングを得た。アイドリング時は音量こそ小さいものの、硬質なノイズが聞こえる。いわゆるディーゼルエンジンのノック音に近い。

そして、走り出しの低回転域の力強さは、まさしくディーゼルエンジンのよう。何も知らされていなければ、「このクルマはディーゼルエンジン車だ」と勘違いしてもおかしくないだろう。

市街地で流れにのって走るときのエンジン回転数は2000回転ほどと低い。しかし、それでも余裕しゃくしゃくで、そのまま流れをリードすることさえ可能。また、アクセルの微妙な操作に対する反応のよさも好印象だ。

そこまではディーゼルエンジンと同じだが、違うのは追い越しなどでアクセルペダルをグッと奥まで踏み込んだとき。ギヤを一気に落として高回転まで回せば、すぐに5000回転を超えて、最高出力を発生する6000回転に届く。


最高出力:132kW(180PS)/6,000rpm、最大トルク:224N・m(22.8kgf・m)/3,000rpmを発揮(筆者撮影)

回転が高まるほどパワー感が増す、いわゆる“伸び感”は、まさしくガソリンエンジンそのもの。高回転まで回しても、パワー感はそのままというディーゼルとは異なる。ディーゼルのように下が力強いのに、上ではガソリンのように伸びやか。ディーゼルとガソリン・エンジンの特性を併せ持っているのだ。

最高出力は180馬力、最大トルクは224Nm。WLTCモード燃費はFFの6ATモデルで16.8?/L。従来からあるガソリンエンジンの「スカイアクティブG」よりも、馬力もトルクも上でありながら、燃費性能さえもスカイアクティブXは勝る。

ディーゼルの「スカイアクティブD」と比べると、最高出力はスカイアクティブXが上だが、トルクと燃費はディーゼルが勝る。ただし、高回転のフィーリングの良さは、ガソリンのスカイアクティブXの方が好ましいというのが、個人的な感想だ。

スカイアクティブXの何が画期的なのか?

スカイアクティブXエンジンのこれまでにない点は、燃料の燃やし方にある。従来のガソリンエンジンは、点火プラグの火花によって燃料のガソリンを燃焼させていた。これに対して、スカイアクティブXは圧縮による圧力と熱によってガソリンを燃やす。

なぜ、そうした燃焼方法を目指したのかといえば、燃料をできる限り薄い状態で燃やしたいためだ。


今回の試乗車はATだったが6速MTもラインナップする(写真:マツダ)

燃料を薄くして燃やすことは「リーン燃焼(リーンバーン)」と呼ばれ、燃費向上のための手法として、多くの自動車メーカーが採用している。しかし、燃料を薄くしすぎると、点火プラグの火花では、燃料すべてをうまく燃やすことができなくなる。

そこで、次なる手として、空気と燃料を混ぜて圧縮し、高圧・高温にして燃焼させようというアイデアが生まれた。それが「HCCI(予混合圧縮着火)」という技術だ。

ところがHCCIで燃焼させることができるのは、主に低回転で負荷の小さいときのみ。現実のクルマで加減速を自在に行えるように、全域で燃やすことができなかった。そこで、圧縮で燃やせないところは点火プラグを使えばよいとなったが、今度はHCCIと点火プラグの切り替えが難しい。ここで、ほとんどの自動車メーカーが足踏みとなっていた。

しかし、マツダは発想を逆転した。それは「全域で点火プラグを使う」というアイデアだ。


スカイアクティブXは水冷直列4気筒DOHC16バルブの2.0L。15.0という高い圧縮比を持つ(写真:マツダ)

本来、圧縮着火は点火プラグなしで行うのが前提だ。“点火プラグを使う”といった時点で矛盾になる。しかし、その驚きのアイデアがブレークスルーを現実のものとした。

点火プラグで、燃料すべてを燃やすのではない。点火プラグで小さな火を作る。そして、その小さな火の圧力で、エンジン内の圧力を高めて圧縮着火をコントロールするのだ。これにより、HCCIと点火プラグの切り替えがなくなった。

マツダは、この方式を「SPCCI(Spark Controlled Compression Ignition:火花点火制御圧縮着火)」と名付けている。

もちろん、世界初の技術だ。ハードウェアは、高圧で燃料を噴霧する燃料噴霧システム、エンジン内の圧力をモニタリングするセンサー、そして大量の空気を送り込むエアサプライ(スーパーチャージャー)というシンプルな内容で、夢のエンジンを実現することができたのだ。

10年にわたってブレずに開発した結果

スカイアクティブXの実用化は、昨年のマツダ3への搭載から。しかし、その研究は驚くほど前から行われていた。マツダが我々の前に圧縮着火の構想を示したのは、なんと10年も前。それは2010年のスカイアクティブテクノロジーの発表時だ。


スカイアクティブ第1弾は2011年に発売された「デミオ 13-SKYACTIV」(写真:マツダ)

その時マツダは、世界最高の圧縮比を実現したガソリンエンジンであるスカイアクティブGと、世界最低圧縮比のディーゼルであるスカイアクティブDを公表した。

当時は、「世界最高の圧縮比、世界最低の圧縮比なんて、本当に実現できるのか?」と驚いたものだが、その資料には、さらに先の次世代エンジンの課題としてHCCIが記載されていたのだ。

10年もブレずに開発を進めた結果が、現在のスカイアクティブXの実現であったのだ。

地道な研究とあっと驚くアイデアでモノにした夢の次世代エンジンが、スカイアクティブXだ。しかし、生まれたばかりの技術であって、まだまだ不満点もある。

正直に言えば、出力とトルクはそれなりに出ているものの、燃費性能が足りない。見込みでは20〜30%の燃費向上と言われていたが、現状ではマイルドハイブリッドを追加しながらも、実質で10%程度。現状ではスカイアクティブDのディーゼルエンジン以下というのは、インパクトに欠ける。


今回、試乗した「X L Package 2WD EC-6AT」の価格は347万7100円(筆者撮影)

また、エンジンのノイズが大きいという欠点もある。そのためマツダ3とCX-30は、エンジン全体をカプセルですっぽりと覆う対策が必要となった。そして、そうした騒音対策にプラスして、超高圧の燃料系やエアサプライなどの補機類を追加したことで重量は増え、コストも高くなった。

現状では、ディーゼルエンジン車よりもスカイアクティブXの車両価格の方が高く設定されている。ディーゼル車に対して約40万円、素のガソリン車に対して約70万円も高いのだ。

生まれたばかりゆえの“伸びしろ”は大きい

つまり、コストを優先して考えれば、車体価格が安く、燃費と燃料費の安いディーゼルエンジンがおすすめとなる。また、素のガソリンエンジン車は、スカイアクティブXに出力・燃費ともに負けるが、他メーカーと比べれば、それほど悪いわけではない。

それよりもエンジン類の軽さが軽快な走りにつながっている。車両価格の差も大きいため、普通のガソリン車も魅力があるというわけだ。


素のガソリン、ディーゼル、スカイアクティブX、どれを選ぶかはどこに価値を見出すかだろう(筆者撮影)

そういう意味でスカイアクティブXは、買い得感のあるクルマではない。しかし、“世界初”の称号は、かつてのロータリーエンジンと同じように相当に大きいものだ。それに、マツダ3とCX-30に搭載されたエンジンは、スカイアクティブXとして最初にリリースされたもの。スペック的には、かなり余裕を持たせているはずだ。

この先の改良で、性能がどんどん高まることが期待できる。伸びしろは、十分以上に用意されているだろう。今回のスペックだけで判断するのではなく、この先の将来性も考えて評価するべきエンジンだろう。

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April 26, 2020 at 04:10AM
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