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Monday, May 10, 2021

異例の超速アップデート!! スカイアクティブXはまだまだ発展の余地アリ!? - ベストカーWeb


 世界初、圧縮着火を実現したガソリンエンジン「スカイアクティブX」を搭載したマツダ3が登場したのが2019年12月。

 それから1年と経たない2020年11月、「スカイアクティブX」は異例の早期アップデートが図られた。

 また、既存モデルオーナーを対象とした制御プログラムなどの最新化サービス「マツダスピリットアップグレード」を行うことも発表した。第1弾はマツダ3、CX-30の初期型モデル、e-SKYACTIV X搭載車を対象に、2021年2月19日よりサービスを開始。プログラムアップデートにかかる料金はなんと無料だ。

SKYACTIV-X最新アップデート!! マツダ3/CX-30の何が変わる!?

 このスカイアクティブXのアップデートはいかなるものだったのか? モータージャーナリストの高根英幸氏が解説する。

文/高根英幸
写真/ベストカー編集部 ベストカーweb編集部

【画像ギャラリー】早くもアップデートされたスカイアクティブX搭載のMAZDA3を見る


■欧州では高い人気と評価を受けているが、日本での人気は?

スカイアクティブX搭載のMAZDA3。SPCCI(火花点火制御圧縮着火方式)の制御を最適化し、最高出力を従来型の180ps/22.8kgmから190ps/24.4kgmにアップさせた

 マツダ3スカイアクティブXのアップデートを受けて、見違えるようにスポーティで扱いやすい特性を得たことは、すでに様々なレポートによってご存知だろう。

 発進時などアイドリングからのピックアップも素直で反応が良くなり、全域で気持ちの良い、俊敏で伸びやかな加速が味わえるクルマに仕上がった。

 その一方で、スカイアクティブXはまだまだ発展途上だな、と思われた方もいるのではないだろうか。

 それは燃費性能だろう。SPCCIという超高度な燃焼技術でスーパーリーンバーンを実現しているという触れ込みの割には、燃費がそれほど高くないからだろう。ハイブリッド車並みの燃費性能を期待している人にとっては、物足りない数字と言われても仕方ない。

 SPCCIの燃焼メカニズムから想像すれば、少ない燃料で燃焼できるスカイアクティブXの燃費は、スカイアクティブGよりも、はるかに向上しても良さそうなものである。

 しかしWLTCモードでの燃費は約1割の改善にとどまっている。スーパーリーンバーンを実現しているといっても、空気をたくさん詰め込んで高圧にした状態で燃焼しているため、空燃比で見ればλ=2以上の数値でも、2LのNAより空気を多く入れているぶんだけ燃料も多くなっている。

 ということはスカイアクティブGの半分以下の燃料噴射量にはならないことになる。

 ストイキ(理論空燃比)でのSPCCIでも、負荷が少ない状況ではEGR(排気ガス再循環)を大量導入して、新気を減らしているのでシリンダー容積一杯の新気に対して燃料を噴射している訳ではないから、リーンバーンとの差はそれほど極端ではない。

 スカイアクティブGでもEGRを使ったり、アトキンソンサイクル(吸気バルブを遅く閉じて新気を減らす)を利用して軽負荷時の燃費を向上させているから、大きな差が出ないのだ。

 しかし現時点でもまだ疑問が残る。それは駆動系の仕様だ。なぜスカイアクティブG 2.0よりファイナル(ファイナルギアレシオ=デフギアで最後に減速する値)が高いのだろうか。トルクもあって、燃費を追求するならファイナルを下げて、高速走行時のエンジン回転を下げるべきなのではないか、と思うからだ。

■スカイアクティブXは燃費の良い領域が広いのも特徴

スカイアクティブX。マツダは、ECUの変更によって、従来モデルを購入したユーザーにも無償アップデートを提供すると表明

 スカイアクティブX開発者の1人であるマツダ・パワートレイン開発本部エンジン性能開発部マネージャー・末岡賢也氏にそのあたりを聞いてみた。

 「スカイアクティブXは燃費の目玉の領域が広いので、エンジン回転を落とす必要がないんです」(末岡氏)。

 「燃費の目玉」とは、BSFC(正味燃料消費率)における効率の良い領域のことで、エンジンの許容回転数域の中で熱効率の高い部分だ。

 エンジンはその特性上、一定の回転数帯である程度の負荷がかかった状態(つまりトルクを出している状態)が最も燃料の消費率が高くなる。それは燃料の熱エネルギーの多くを駆動力に変換できている、ということだ。

 しかし回転が上昇するとトルクが落ちてくるエンジンは、加速中には負荷が大きくなってくるので燃料をたくさん送り込んでパワーを出す(トルクを出す燃焼の回数を増やす)ことになるから燃費が悪くなる。

 損失が大きいエンジンは加速中ではなくても、中回転域を維持するだけで燃料を消費してしまう。

 ところがスカイアクティブXは中回転域でもトルクを出しながら燃焼が出来ているだけでなく、前述の通りSPCCIとEGRなどを組み合せることでトルクが小さい状態でも熱効率が高い。結果として回転を上昇させても、極端に燃費を悪化させないのだ。

 理屈のうえでは確かにそうだが、エンジン回転は燃焼回数と直結するから、燃焼回数を減らした方が実燃費は伸びるのではないだろうか。

 ドイツ製のディーゼル車が高速巡航で軒並み好燃費をマークするのも、レシカバ(レシオカバレッジ=変速比幅)の高さから巡航時のエンジン回転数を大きく落とすことができるためだ。

 伝達効率が低いCVTの実燃費が高いのは、伝達ロスを含めてもレシカバの広さからエンジン回転数を落とすことができるからで、昨今の走行抵抗の低いクルマにとって、高速巡航時の燃費を向上させるには、巡航時のエンジン回転数を下げることは効果テキメンなハズなのだ。

 マツダの開発陣は誰もがエンジン好きでクルマ好き、MTをほとんどの車種に設定していることからも、高速燃費よりドライビングの楽しさを優先しているような雰囲気も感じ取れる。

 しかし、今や従来のクルマ好きは極めて少数派で、ADAS(先進運転支援システム)などの新技術や燃費性能を購入時の優先事項にしているユーザーにスカイアクティブXを受け入れてもらわなければ、スズキのフルハイブリッドのように廃れてしまう可能性も出てくる。

次ページは : ■マイルドハイブリッドの活用で巡航時のエンジン回転を下げよ

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