ロボアドといえば、全世界の株式インデックスや債券などに分散投資し、リバランスも自動的に行ってくれる簡単さと安心感から、初心者における投資手法の1つとして定着してきている。 【画像】ファクター分析とは何か? 一方で、伸びるであろう銘柄を見つけて投資するアクティブ運用の世界にも、新たな動きがでてきた。スマートプラス(東京都千代田区)が提供する、アクティブ運用を行うロボアド「Wealth Wing」だ。インデックスETFなどを使うロボアドに対して、Wealth Wingは東証一部上場銘柄から18銘柄を選び、「市場平均に勝ちに行くアクティブ運用」を行う。
データとアルゴリズムで銘柄選定
多数のアナリストが企業分析を行い、ファンドマネージャーが投資する銘柄を選定するアクティブ型投信は、指数に連動するインデックスファンドと比べて信託報酬と呼ばれる手数料が高いといわれる。 インデックス投信では年率0.1%以下の手数料のものが増えてきているのに対し、モーニングスターの調べによるとアクティブ投信の平均手数料は1.56%(2020年10月)。実に15倍ものコストがかかっている。ファンドマネージャーがいかに優秀でも、この高い手数料が足かせとなって、なかなか市場平均であるインデックスの成績を超えられない。このことが知られてきたのが、昨今のインデックス投資ブームの理由の1つだ。 しかしデータとアルゴリズムに基づいて銘柄を選定できたら、コストを抑えてアクティブ運用が可能になる。Wealth Wingはリバランスなどのロボアドとしての基本的な機能を押さえつつ、0.9%の手数料と月額300円、また売却時手数料1%というコスト構造を実現した。WealthNaviなどのロボアド手数料1%に比べても、コストを抑えた設計だ。 コストを掛けずに銘柄選定を行う秘訣(ひけつ)は、マルチファクターモデルによるスマートベータ運用だ。
マルチファクターモデルによるスマートベータ運用
マルチファクターモデルやスマートベータ運用というと何やら小難しそうだが、実は個別株の投資家が普通にやっていることをデータ化、アルゴリズム化したものだ。株価に影響を与える要因を「ファクター」と呼び、そのファクターに応じて組み込む銘柄を選定する。 ファクターの例としては、売上高成長率や自己資本比率などのファンダメンタルズ系や、PER、PBR、配当利回りといった投資指標系、また時価総額や騰落率などのテクニカル系、そしてリアルタイム消費データやネット上のニュースを分析したオルタナティブデータ系などがある。 「Wealth Wing」ではこれらファクターの数値を収集し、インデックスを上回る成績を出す要素を見つけるところから始める。例えば、東証一部銘柄のROAを調べ、TOPIXに対して株価上昇率が上回った企業のROAがどうだったかをプロットする。もし、ROAが高い企業のほうが、TOPIXよりも高いリターンを出していたなら、ROAは市場を上回るファクターの1つだということだ。 例えば効果の高いファクターの一つに「予想修正サプライズファクター」があるという。これは、上方修正や下方修正などのサプライズがあった銘柄は、市場平均を上回ることが多いというファクターだ。「前期対比で今期サプライズがある銘柄は、発表ごとに予想が徐々に上がっていく傾向にある。通期で見るとけっこうなサプライズになっている。特に中小型株については、ウォッチしている人が少ないため、大きな効果がある」(スマートプラス運用担当) このようにして、50以上のファクターを分析し、その中から市場平均を上回る可能性が高いファクターを組み合わせる。これがマルチファクターモデルの概要だ。この合成ファクターを基に、それぞれの銘柄がどの程度市場を上回るかを数値として導き出す。その数値を最大化しつつ、市場平均から大きく乖離(かいり)しないように、銘柄選定と保有比率を計算することで、インデックスに勝るポートフォリオを構築する。 一般的なアクティブ投信では、アナリストの分析に基づき、ファンドマネージャーが組み入れる銘柄を決定する。一方で、「Wealth Wing」ではデータ分析に基づきアルゴリズム的に組み入れる企業を決めているというわけだ。 こうしたファクター分析に基づく運用手法はスマートベータ運用と呼ばれる。株式インデックスのことをベータと呼ぶが、単なる市場平均ではなく各種ファクターを活用した運用であることから「賢いベータ」ということでスマートベータだ。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)もスマートベータを採用してポートフォリオの比率を決めており、機関投資家の間では一般的な手法の1つだ。
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