新型コロナウイルス禍で資金繰りに悩む医療機関に近づいて返済不要な公(おおやけ)の融資枠があると偽り、高額な手数料をだまし取る詐欺行為が、全国で横行している。独立行政法人「福祉医療機構」(東京)が2年前、経営難の医療機関などに対し、無利子・無担保での貸し付けを始めたところ、不審な勧誘に関する情報が相次ぎ、数百万円を詐取されたとみられるケースもあった。公的医療保険に支えられ、絶えず収入がある病院から資金をかすめ取る新たな手口とみられ、機構は注意を呼び掛けている。
偽の身分証明書でなりすまし
機構が手がける融資は、コロナ禍で収益が悪化した医療機関や福祉施設が対象の「新型コロナウイルス対応支援資金」。機構が減収割合や運営形態に応じて上限額を設定し、原則として2億円を限度に無利子・無担保で貸し付ける。令和2年2月に始まり、今年9月末まで申し込みを受け付けている。
「融資額の1割を手数料として払ってくれれば融資の半額が返済不要になる」
機構によると、制度開始以降、医療機関の医師や事務担当者に対し、訪問や電話、交流サイト(SNS)を通じて、こうした持ちかけが相次いでいるという。
融資は、医療機関や福祉施設側からの申し出に基づき、機構が決定する。手数料は不要で、機構が自ら勧誘することはない。
「融資の半額が返済不要-」。いわゆる借金の棒引きをあらかじめ約束するなどは論外だ。
機構では、ホームページ上で、こうした勧誘への注意を呼びかけているが、制度開始以降、不審な勧誘や手数料の要求を受けたとの情報が約80件寄せられた。
偽の身分証明書で機構の職員になりすまして突然病院を訪れたり、無料通信アプリ「LINE」で突然勧誘してきたりと接触の形態はさまざま。医療機関や福祉施設の大半は、誘い文句に乗ることなく被害を免れたというが、中には数百万円の手数料を詐取されたとみられるケースもあり、機構の担当者は「隠れた被害が数多く存在するかもしれない」と危惧する。
自主的な休廃業や解散は567件
外出自粛による受診控えや、感染予防のための設備投資。コロナ禍を背景に医療業界の経営環境は厳しさを増している。
信用調査会社「帝国データバンク」によると、令和3年における医療機関の倒産件数は、前年と同水準の33件だったが、自主的な休廃業や解散は567件に上り、集計を始めた平成28年以降で最多となった。
医療機関の経営は保険診療の場合、原則3割の患者負担分と、公的医療保険からの診療報酬に支えられている。商売の仕入れ先と異なり、倒産といった相手方の都合で診療報酬の支払いが滞ることはない。
同社大阪支社の昌木(まさき)裕司情報部長は「診療報酬という手堅い収入がある医療機関は、詐欺の標的になりやすい。トップが経営に慣れていない場合、防衛策が後手にまわりかねず注意が必要だ」と指摘している。(山本考志)
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