スバルが目指す「感動ドライブ性能」。これを実現する2つの技術を、春の南房総という絶好のロケーションで、たっぷりと試すことができた。
その1つは、「SUBARU Active Damper e-Tune」(スバル・アクティブ・ダンパー イー・チューン)。これは「レヴォーグ STI Sport」で初登場した電子制御ダンパーの減衰力特性を、ディーラーでプログラミング変更できるアップデートサービスだ。
対象となるのはレヴォーグ STI Sport各グレードのA~Bタイプで、価格は3万3880円。これにディーラーごとに決まっている工賃が別途必要となるが、おおよそ4万円以内に収まるという。
そしてこのダンパー性能を確かめるために用意されたのが、スバルのドライブアプリ「SUBAROAD」だった。今回は全部で10か所あるルートのうち「千葉/房総」編を選んで、名所を巡りながらその乗り味を確かめてみた。
SUBARU Active Damper e-Tuneによって乗り味はどれだけ変わるのか?
さて肝心な「Active Dumper e-Tune」だが、そのフィーリングは確かにスタンダードなダンパーセッティングから、ひと味違うものになっていた。
今回仕様変更されたのは3つあるダンパーセッティングのうち「コンフォート」モードと「スポーツ」モード。その双方の減衰力特性が、スタンダード仕様よりもより快適に、そしてスポーティに仕立て直されている。
減衰力の設定は各モードのバルブ開度をプログラミング変更することで得られ、ZF製ダンパー自体に手は加えられていない。だからディーラーでこれを手軽に仕様変更できるし、気に入らなければ元に戻すことも可能なのだという。
実際のモード変更は、主としてドライブモードセレクトで行なう(インディビジュアルモードではダンパーのみセッティングも可能)。その際「コンフォート」モードを選ぶと、ダンパーもコンフォートに。そしてスポーツモードダンパーを試すには、「スポーツ+」モードに入れる必要がある。つまりドライブモードセレクトが「ノーマル」モードと「スポーツ」モードのときは、ダンパーの減衰力はノーマルの減衰力設定となる。
コンフォートモードのダンピング特性をひとことで言うと、これまで以上に“ふんわり感”が増した印象だ。
ダンパーの減衰力がさらに弱まり、サスペンションのストロークも積極的に使って、荒れた路面からの入力をいなすようになった。
また大きな段差やうねりを乗り越えたあとはスッと足が伸びて、そのあとボディが柔らかく着地する。それはダンパーストロークを大きく取っているレヴォーグだからこそできる、バンプタッチによる突き上げ感のない、快適なバウンスだった。
さらに感心したのは、こうしたソフトライドでも、ハンドリングレスポンスが鈍くならないことだ。カーブでは操舵初期から適度な接地感があり、結構回り込んだ状況でも、しなやかな身のこなしでこれをクリアしてくれる。
というのもこのアクティブダンパーは、コンフォートという閾値の中でも、バネ下の動きやジャイロ(角加速度)とG(加速度)をセンシングして、減衰力特性を適宜変化させているのだ。だからむしろ不整地などでは、コンフォートモードの方がダンパーが突っ張らず、適切なコーナリングフォームを保ってくれたりする。
ただそのコンフォート性をやや強調するあまり、G変化の少ない低速域ではバネ下でタイヤが動き過ぎ、その重さや横揺れ感が増してしまう場面も見受けられた。
そしてこうした場面では、個人的には従来のコンフォートモードの方が、収まりがいいと感じた。その減衰力はアップデート仕様に比べてやや引き締められてはいるが、タイヤとの剛性とバランスがマッチしているから、路面からの入力を素早く吸収できる。そして揺り返しなく、全ての動きをピタリと収める。
ふんわりと角なくバウンスする乗り心地と、車体の余分な動きを抑えること、どちらをコンフォートだと感じるか。どうせなら今回のチャンネルは「スーパーコンフォート」とでも銘打って、もうひとつモードを増やしてしまえばいいのに、と筆者は感じた。
対してスポーツモードのダンピングは、正直に言えば今回の試乗コースでは、その性能を測りかねた。
そもそもレヴォーグは従来のスポーツモードでも、サーキットレベルの高荷重領域に破綻なく対応できていた。だから個人的なことを言えば、これ以上の減衰力はいらないのではないか? と思う。確かにアップデートしたスポーツモードの減衰力は操舵初期の応答性をシャープに立ち上げるのだが、当然その分乗り心地もわるくなる。
ただこうした意見も、ユーザー的には意見が真っ二つに分かれる。他車からの乗り換え組からは筆者のような意見が多く、レヴォーグを長く乗り続けるユーザーからは、もっとダイレクトなハンドリングを楽しみたい! という声が寄せられるというのだ。
なるほどそうした声にフレキシブルに対応する手段として、このアップデートサービスは確かに有効だ。また、仮に今後STIがこのレヴォーグにスポーツスプリングや強化スタビライザーを設定したとしても、こうしたZF製ダンパーの拡張性は大いに役立つだろう。実際限定500台が完売した「レヴォーグSTI Sport♯」も、そうした手法で作り上げられた1台である。
ドライブの最後はスバロウ君に「南房総国定公園 野島崎」を案内されて、ゴールを迎えた。ちなみにSUBAROADの通りに走行すればその走行距離は107kmで、想定走行時間は2時間30分。友達や家族に「ドライブしようよ!」と誘うには、ちょうどよい距離と時間である。
しかしわれわれCar Watchチームは、実に5時間25分(!)と想定された時間を大幅にオーバーして、夕日が美しく輝く房総半島の最南端にゴールした。それはいつになく真面目に撮影をしていたからではなく、ドライブそのものが抜群に楽しかったから。選りすぐられた道やポイントを、本気で堪能しちゃったからだ。
っていうかクルマでドライブするのって、こんなに楽しかったっけ!?
というわけで、試乗会事務局の皆さん、遅くなって本当にゴメンナサイ。そしてスバロウ君、また会おう!
からの記事と詳細 ( 【試乗レポート】スバル「レヴォーグ」の電制ダンパー特性を ... - Car Watch )
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