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Thursday, February 24, 2022

寒い冬はスマホの電池持ちが半分?カイロはNG?実験結果をもとにプロが解説 - TIME&SPACE


冬など寒い場所でスマホのバッテリー持ちが悪いという検証記事のイメージ写真

寒い日に外でスマホを使ったとき、電池持ちが悪いと感じたことはないだろうか。過去にTIME&SPACEでも低温環境下でスマホの電池持ちが悪くなることについて取材してきたが、実際にどのくらいの影響があるのだろうか。KDDIにおけるスマホ品質管理の専門家に話を聞いた。

KDDIのスマホ品質管理担当者 KDDIプロダクト品質管理部 山西一郎、水野浩行

【目次】

低温環境下でのスマホのバッテリー持ちについて実験

―――冬のスマホは電池持ちが悪くなるという話はよく聞きますが、実際にどれくらいの影響があるのでしょうか。

山西:論より証拠、実際に計測してみましょうか。前回の記事ではなぜ寒い場所ではスマホの電池持ちが悪くなるか、その仕組みをご説明しましたが、実際にどれくらい電池持ちが違うのか、この「恒温槽」という内部の温度や湿度を任意の数値に設定できる機械を使って実験してみましょう。

恒温槽 恒温槽(内部の温度や湿度を任意に設定できる機械)

■実験内容
・空調の効いた部屋A(約25℃)と、寒い場所B(0℃、冬の東京を想定)、極寒の場所C(−20℃、冬の北海道を想定)それぞれでの電池持ちを比較
・A、B、C、すべて充電する環境は同じく、空調の効いた暖かい部屋で満充電した状態。
・それぞれのスマホでダウンロード済の動画を繰り返し再生し、何時間後に電源が落ちるか、その時間を計測。
・B、Cは、恒温槽を使用。

恒温槽の中で動画を再生するスマホ −20℃に設定した恒温槽の中で、動画を繰り返し再生

※「-20℃」という環境は、取扱説明書の使用範囲温度から大きく外れております。今回は安全性確認のうえ、専門家立ち会いのもと実験しましたが、電池以外への悪影響の可能性もありますので、真似をされないようお願いいたします。

■実験結果

KDDI品質管理部による恒温槽内での冷却環境下での動画再生時間の実験結果

―――温度によって、電池持ちが倍以上も違うのですね。ビックリしました。

水野:今回の実験では、空調の効いた室内では約6時間近くも連続視聴できたのに対し、−20℃の世界では約2時間半と、大きな差が出た結果となりました。スマホの利用状況や機種など、条件が違うとまた別の計測結果が出ると思いますので、あくまでもこの条件での例と捉えていただければと思いますが、温度がバッテリーに与える影響がいかに大きいか、わかっていただけると思います。

―――寒いと電池持ちが悪いというのは都市伝説かと思っていましたが、事実なのですね。

山西:はい、低温環境では電池の内部抵抗が大きくなってしまいます。リチウムイオン電池は「電池内部の電解液をイオンが移動することで電流が流れる」という仕組みなので、温度が低くなると電解液の粘度が上がってしまい、イオンが移動しにくく、電池持ちが悪くなるのです。ただしそれはあくまでも寒い環境での一時的な動作で、快適な室内では元に戻るのでご安心ください。

―――では、カイロで温めるなどはいかがでしょうか。

山西:カイロは手軽に暖を取ることができる方法ですが、スマホと一緒にポケットやカバンに入れるのはおすすめできません。冬は高温によるスマホへの影響を気にしていただきたい時期でもあります。

冬の暖房によるスマホの高温問題

―――寒い冬なのに、高温による影響でしょうか?

山西:はい、不思議に思われるかもしれませんが、冬は気温が低いので、身体を温めるためにさまざまな暖房器具を使うことが多く、これが電池の劣化などの原因になる可能性があります。

―――どのくらいの温度から気をつけるべきなのでしょうか。

山西:たとえば25〜30℃など、冬の暖房空調でよく設定される範囲で、人間が過ごすのに快適な温度であれば何の問題もありませんが、ポケット内の使い捨てカイロや、ストーブのそばなど、思わぬ高温になる環境では注意が必要です。

カイロとストーブのイメージ写真

水野:スマホに内蔵されているリチウムイオン電池は低温だけでなく高温にも弱く、スマホの取扱説明書には「5℃~35℃が使用温度」と記載されています。あくまでも目安ですが、これを超える環境温度で使うと、性能劣化や膨張につながります。

スマホの取扱説明書の適正使用温度に関する記載部分

水野:では実際にどれくらいの温度になっているのか、こちらも測定してみましょう。

ポケット内の使い捨てカイロの温度はどれくらい?

水野:ポケットの中に使い捨てカイロを入れて、その温度変化を測定します。

ポケットの中に使い捨てカイロを入れて、その温度変化を測定する実験

■測定内容
・室温26℃環境にて、市販の使い捨てカイロ(鉄粉の酸化熱を利用した貼らないタイプ/最高温度68℃/平均温度52℃と記載あり)を使用。
・カイロを15回振り、中央部に温度計のセンサー部を挟んだ形で、ボトムパンツの前ポケットに約30分間入れたままとし、最高温度を計測。
・比較対象として、同じ使い捨てカイロを机上に置き、カイロ中央部に温度計のセンサー部を押し当て、約30分放置し、最高温度を計測。

■測定結果

KDDI品質管理部によるポケットに入れたカイロの温度測定結果

―――ポケットの中と外では、温度に大きな差が出ましたね。

山西:今回の実験での温度では、すぐに電池の膨張や発火といった異変が発生するとは考えられませんが、43.6℃という温度は電池にとっては良い温度ではないので、この状態を長時間継続した場合、容量低下や膨張につながる可能性があります。

なお、今回の実験では、カイロに記載があった「最高温度68℃」よりだいぶ低い温度でしたが、使い捨てカイロの使い方によるものと考えます。68℃まで温度が上がれば、より電池に厳しくなるでしょう。

水野:このことからも、スマホ電池への影響と万が一の危険性を考えると、カイロとスマホを同居させないことを強くおすすめいたします。

スマホが高温なストーブやカイロを嫌うイメージ

―――よくわかりました。冬に外でスマホの電池持ちが悪くならないよう、少しでも温められればと思っていましたが、カイロと一緒のポケットに入れることは止めた方がいいですね。

水野:はい、冬のこたつや電気毛布の中も同様に、電池に厳しい温度と考えます。寒い日に暖を取る場合は、スマホ周辺の温度にご注意ください。

電気ストーブ周辺の温度はどれくらい?

水野:もうひとつの測定対象として、市販の電気ストーブを用意しました。空気センサーで付近の空気の温度を計測します。

電気ストーブの周辺温度を測定する人

■測定内容
・室温26℃の環境で、市販の電気ストーブ(出力:800W、熱源は石英管)の電源を入れ、数分間放置。
・体感上、室内温度がほぼ安定したと感じた時点で測定開始。
・空気センサーを装着した温度計にて、電気ストーブの熱源からの距離ごとに空気の温度を測定。

■測定結果

KDDI品質管理部による距離ごとのストーブ周辺の温度測定結果

KDDI品質管理部による距離ごとのストーブ周辺の温度測定結果

―――40cmより近い距離になると、スマホバッテリーの適正温度である35℃を超える室温になるんですね。

山西:はい、今回の例では、極端に近い距離である熱源から5cm(電気ストーブの熱源への接触を防ぐための「ガード」の外側すぐ)では85℃を超えました。人がここまでストーブに近づくことは、日常生活においてそう起きにくいとは思いますが、リチウムイオン電池の特性を考えると、膨張の危険性がかなり高まります。

水野:右グラフのとおり、熱源から離れれば加速度的に空気温度は下がり、電池の膨張/焼損に対するリスクも減少します。ただし、リチウムイオン電池の特性を考えると、極端な高温でなくても放置時間によっては電池が膨張する危険性があります。取扱説明書には35℃までの範囲でご利用くださいと記載されていますが、わかりやすく言うと、ストーブの温かさを人が感じる距離(今回の例では熱源から約100cm以内)にはスマホを置かない方がよい、くらいで考えていただければ、と思います。

山西:もちろん暖房器具すべてが今回のような危険性があるわけではなく、発熱量や計測条件によって結果が変わりますので、あくまで今回の結果からの考察ですが、ピンポイントで暖める種類の暖房器具をご利用の際は、十分に距離を取ることをおすすめしたいですね。

水野:室内でなくても、焚き火やバーバキューなどでも同様のことが起きうる可能性があるので、アウトドアが趣味の方も同じように気を付けていただければと思います。

冬のスマホは高温にも注意

あらためて、冬のスマホの取り扱いについて、まとめておく。

・寒さでスマホのバッテリー持ち時間は減るが、一時的なもので電池劣化や故障でない場合が多い。
・カイロの入ったポケット、ストーブのそば、こたつのなかなど高温環境にスマホを放置しないように気をつける。
・寒いところから暖かい場所に移動するときは、寒暖差による結露が発生しないよう、できるだけ常温環境で馴染ませたり、事前に人肌で少し温めるなどしておく(前回実験)。

まだまだ寒さが続くこの季節。スマホの電池にとっても配慮が必要な時期なので、今回の実験結果と注意点を参考に、もう少し気温が暖かくなるまでスマホを大事に扱ってほしい。

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