パリに暮らす人はパリジャン・パリジェンヌ、ボルドーに暮らす人はボルドレー・ボルドレーズ…このように、フランスには各都市の住民を男性・女性名詞で呼ぶ習慣がある。
パリ以外の地方に暮らす人などはまとめて、「ruraux(リュロー、複数形)」と呼ばれたりするものだ。
フランスではロックダウン以降、パリを離れる人が後を絶たない。
ところが今増えているのは、完全にパリを捨てない、パリ暮らしと田舎暮らしを半分ずつとする人々だ。
2021年にはそんな彼らを表現する新しい単語「paruraux(パリュロー)」が誕生し、一種の社会現象にもなっている。
言わずもがな、パリの物価は目が飛び出るほど高い。
外食も高くつけば、不動産の値段は空きがあってもなかなか下がらない。
度重なるデモやストで、急いでいるのに何駅も歩かされる…というのがパリの日常だ。
このようなわけで、パリっ子たちを地方へ向かわせる理由はいくつもある。
ただパリュローに関して言えば、パリを本拠地とするのではなく、逆にセカンドハウスにしているところに特徴があるだろう。
とりわけテレワークが可能な35〜45歳のパリジャンたちの新しいスタイルで、3度のロックダウン期間を地方の実家で過ごし、田舎暮らしの魅力を再発見したことがきっかけとなっているケースが多い。
それでも彼らは完全に田舎に引っ越すわけではない。
首都では不可能な庭付き一軒家を地方に購入(もしくは賃貸)するが、パリには小さなスタジオタイプのアパルトマンをキープ。
週に2〜3日はパリで過ごし、田舎では得られない刺激やメリットも残す、これがパリュローの実態だ。
2021年には、そんなパリュローの入門書『Les Paruraux(レ・パリュロー)、半分パリジャン、半分地方暮らし』が出版され、ベストセラーにもなった。
これは仏紙Le Parisienのジャーナリスト、マリオン・クレンプ氏とイラストレーターのミカエル・プリジャン氏による共著で、パリュローの実態をフランスらしいユーモアと皮肉で紹介する。
当書によると、パリュローに欠かせないものは二つあって、「Wi-Fi」「近くにパリ行きの駅があること」なのだそうだ。
事実、パリュローが選ぶ居住先はイル・ド・フランス圏内(首都パリを中心とした地域圏)が多い。
そのためパリで車を使うことがないよう、首都行きの電車が通っていることがマストなのだという。
なお著者によれば、パリュローという単語は、フランスにおける社会現象を最終的に言葉で表現するために必要だった、とのことだ。
一方、受け入れる地方住民はどうなのだろうか。
そんなパリュローを好奇の目で見ているのか…と思いきや、意外にも多くが好反応を示しているという。
たとえばパリ郊外東部、セーヌ・エ・マルヌ県にあるヴィレセルフ村では、5年前の国勢調査で650人だった人口が719人に増え、最近ではパリュローの村長も誕生した。
「パリュローは経済的に豊かで、学校・マルシェ・現地不動産にも活力を与えてくれる。新しく選ばれた村長は、村祭りや蚤の市に人を呼び込むなど、町の文化的魅力を発信してくれている」と、セーヌ・エ・マルヌ県農村会長のフランソワ・デイソン氏は讃えた。
2021年に見られたパリュローの増加は、2022年上半期にも確認されている。
しかし彼らの目的は単に田舎に物件を買うことではない。
むしろ、2つの土地を合理的かつ持続可能な方法で行き来する、という意図が大前提にあるそうだ。
そんなパリュロー現象、これからもまだまだ続きそうだ。(る)
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