東日本大震災では総額30兆円を超す復興予算が投入された。岩手県全体の2011~19年度の復興関連事業費は総額3兆3367億円に上る。このうち、半分以上を占める1兆8078億円がハード事業に投入された。
県によると、ハード事業のうち、集団移転や土地のかさあげ、区画整理などに3012億円、仮設住宅や災害公営住宅の建設に1400億円が使われた。ただ、防潮堤の整備のように河川課や砂防災害課など複数の担当課が携わっている事業の場合、全体でどのぐらいの予算が投入されたのか、県としても把握できていない。県財政課は「ひとつの事業でも、決算上は複数の分野に分けて計上されているため、復興予算を検証しようとしても、分かりづらい部分はある」と話す。
13ある決算の項目別にみると、最も多かったのは、壊れた道路や建物を元に戻すための「災害復旧費」が9009億円。続いて公共施設や防潮堤を新たに建設するための「土木費」が7056億円に上った。
なりわいの再生に向けた被災企業への貸付金や補助金などを含む「商工費」は6761億円、避難所の運営費やがれきの撤去費用などを含む「民生費」が2196億円だった。
震災10年を迎え、ハード事業がほぼ終わる一方、被災者の心のケアやコミュニティー形成の支援、なりわい創出といった課題が残る。県復興局は2021年度の当初予算案に、被災者の孤立化を防ぐための組織新設に4千万円、沿岸での起業支援に1100万円などを計上している。(中山直樹)
被災したまちにどのぐらいの予算が使われたのか。
市街地が壊滅し、県内で人口あたりの死亡率が最も高かった大槌町に投入された町、県、国の予算を独自集計したところ、11~19年度までの9年間で、少なくとも3487億円使われた。町の財政担当者は「震災前の町の予算規模の50年分くらい」。現町民1人あたりでは、3千万円以上が使われたことになる。
町で行われた復興事業は三陸道(420億円)や防潮堤(573億円)など国や県が直轄で行うものや、防災集団移転(347億円)や区画整理(306億円)など「復興交付金」や「特別交付税」を原資に町が行うものがある。国や県、町の予算を集計すると、壊滅状態の町を再生するインフラに使った予算が全体の8割を超えた。
ハード事業がほぼ完了し、今後はその維持管理費が課題になる。なかでも、町財政を圧迫するのが、災害公営住宅だ。大槌町内では県営、町営合わせて876戸分が計229億円かけて建設された。建設予定時から100戸近く減らされたが、空き部屋が増えることが予想されている。
大槌町の災害公営住宅の空き部屋は現在、全体の1割弱。ただ、入居者の45%が65歳以上で、このまま推移すると20年後には4割強が空き部屋になると町はみている。空き部屋分は家賃収入が見込めないが、建設計画に携わった元町幹部は「大半の貸しアパートが津波でなくなり再建しておらず、U・Iターン者らを受け入れるためにも必要な住宅ストック」と話す。
町は、被災者以外の住民も入居可能にしたり、戸建て災害公営住宅をすでに6戸、入居者に売却したりと、対策を進めている。(東野真和)
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