青森県の東半分と岩手県北部は糠部(ぬかのぶ)郡と呼ばれ、古代末から中世にかけて名馬の産地として全国に名をはせた。今も残る「一戸」から「九戸」までの地名はそれぞれの牧野を表し、郡内のどこで生産された馬かを示す「戸立(へだち)」という言葉が共通語になっていた▼鎌倉幕府の歴史書『吾妻鏡』には奥州藤原氏が仏師運慶に「糠部駿馬(しゅんめ)」を贈ったことや、源頼朝に馬を贈られた後白河法皇が「戸立」に興味を示したことが記されている▼糠部駿馬が奥州最古のナショナルブランドだったとするならば、現代の東北を代表する農産品ブランドの一つは青森・大間漁港に水揚げされる「大間のマグロ」だろう。東京市場の初競りでは1本数億円の値が付いたこともある超高級品だ▼昨年11月、ブランドを傷つけかねない問題が発覚した。資源量が一時激減したクロマグロは都道府県や漁法別に漁獲枠が配分され、漁獲実績の報告が義務づけられている。大間産の10トン超が未報告のまま県外に流通していたことが判明したのだ▼未報告漁獲は「氷山の一角」との見方も。資源回復に向けた努力をないがしろにする行為で、再発防止策の強化が不可欠だ。英語の「ブランド」は、家畜に押す焼き印が語源という。不正を放置したままでは、負の烙印(らくいん)を押されてしまう。(2022・3・13)
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