田添聖史
再生可能エネルギーの活用に向け、富山県が立山カルデラ内の立山温泉地域で進めていた地熱発電所計画が、現時点で事業化できない見通しであることがわかった。県が2月21日の県議会で明らかにした。期待できる発電出力が必要量の半分に満たない恐れがあるためという。県は今後も事業化を探るとしているが、国費と県費計約13億円を投じたプロジェクトは曲がり角を迎えている。
地熱発電は、地下1千~3千メートルほどにある熱水や蒸気などの地熱資源によってタービンを回して発電するもの。県は2015年度から毎年予算を計上し、立山カルデラ内の調査を実施。17年度には、地熱資源が期待できる地点を調べる掘削調査などで、大規模発電は可能との見方に至った。
21年度の調査では、立山温泉跡地から南に約1キロ地点で、深さ約2キロで蒸気や熱水があると推定。だが、期待できる発電出力は3600キロワット程度で、採算の取れる規模の7600キロワットの半分に満たず、採算が見込めないこともわかった。「開発可能性は残されているものの、事業化の判断には懸念がある」(担当者)として、22年度予算に調査に関する費用を計上しないと判断した。
2050年に温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「脱炭素」実現を目指す国にとって、再生可能エネルギーの拡大は急務。地熱発電は、二酸化炭素をほぼ排出せず、24時間安定的に供給できる「ベースロード電源」として、その選択肢の一つとされている。
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資源エネルギー庁などによると、火山大国の日本は地熱資源量が米国、インドネシアに次ぐ世界3位の2300万キロワットに上る。国は2030年度までに、国内の地熱発電量を現在の約60万キロワットから約150万キロワットに増やすべく、開発を推し進めている。
だが、開発には多額の初期投資がかかる一方で掘削成功率は低く、環境影響の調査などに時間がかかるといった問題を抱えていた。今回の富山の場合も、国費8億円、県費5億円を投じて事業化を模索したが、調査開始から7年目の今年度、十分な発電量が見込めないとの結論に至った。
富山県企業局の担当者は、朝日新聞の取材に「現時点では難しいが、断念ではない。将来の可能性に向けて、官学と連携を続ける」と話す。今後は、地熱発電に関心のある民間企業に調査データを提供するなど取り組みを続け、国に支援を求め、事業化の道を模索するという。(田添聖史)
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