2023年08月29日 14時30分
世界株式のアクティブ運用の魅力は何か-。三井住友DSアセットマネジメントの三牧洋介プロダクトスペシャリストは「『これから上位に入ってくる企業』に投資することで、より大きなリターンの獲得を目指すことだ」と指摘した。また、青木英之シニアファンドマネージャーは、「景気サイクルを超えて勝ち残る企業に長期的に投資することで、超過収益を安定的に生み出すことを目指したい」と述べた。
◆「世界株=米国株」ではない
-海外株式アクティブ運用の魅力は。
三牧氏 世界に目を向けることで、投資機会は大きく広がる。世界の時価総額ランキングを見ると、トップは時価総額3兆ドル超(6月末時点)のアップルで、次いで米国のメガキャップ(超大型株)が並ぶ。ただ、その下にはアジアや欧州企業が入っている。確かに米国企業の存在感は大きいが、世界の時価総額に占める米国株式市場の割合は半分程度だ。「世界株=米国株」ではない。
日本では、米国株の代表的な指数である「S&P500」を参照するインデックスファンドが人気だ。インデックス運用では「今、上位に並ぶ企業」に投資するが、アクティブ運用であれば「これから上位に入ってくる企業」を探して投資し、より大きなリターンを目指すことができる。米国以外の投資機会にも目を向けたアクティブ運用の魅力は大きい。
◆グローバル体制へ移行
-三井住友DSの世界株の体制は
青木氏 当社は、世界株式の運用体制として、ファンドマネジャーや調査担当者など、国内外に60名を超える人員を擁している。
数年前からグローバル運用調査体制への移行を進めている。例えば半導体関連企業のように、企業活動がグローバル化し国内外の企業が同じ土俵で戦っているセクターについては、日本株の担当者がグローバル株の運用チームを兼務し、一緒に調査に参加している。
4月からは、新興国をカバーするアジアの拠点のメンバーと、日本を含む先進国の株式を運用・調査する東京とロンドンのグローバルグループが一体となり、調査や銘柄をめぐる議論を定期的に行っている。
◆Quality and Growth
-グローバル株式運用の考え方は
青木氏 私たちは「『景気サイクルを超えて勝ち残る企業』に長期的に投資することで、超過収益を安定的に生み出す」という投資哲学を持っている。こうした運用を可能にする投資先は、「独自のビジネスにより、キャッシュフローを創出し、成長させることができる企業」だ。こうした企業を「Quality and Growth企業」と呼んでいる。
◆ESGは成長機会
-Quality and Growth企業の特徴は。
青木氏 こうした企業は五つの要素を備えている。①長期・構造的に成長分野で事業を展開している ②ユニークかつ分かりやすいビジネスモデルを持っている ③高い収益力とキャッシュフロー創出力を持っている ④過去の業績について良好なトラックレコードを持っている ⑤ESG(環境・社会・ガバナンス)に対して強い意識がある-だ。
当社は早い段階から、ESG要素を財務分析と統合するインテグレーションを推進してきた。ESGを「経営リスク」と捉えるのではなく、「成長機会」と考えている。企業調査でも、「ESGを活用して永続的にキャッシュフローを成長させる経営戦略を取っているか」に注目してヒアリングしている。
◆キャッシュフローが拡大する「高成長~安定成長期」
-企業のライフサイクルではどこに注目するか
青木氏 企業は、事業を立ち上げる「スタートアップ期」から、「高成長期」「安定成長期」を経て、「成熟期」「衰退期」へと向かっていく。当社は「キャッシュフローが安定的に成長する時期が最もリスク・リターンが高い」と考えており、「高成長期」「安定成長期」に着目して、グローバルに企業を厳選している。
長期的に見ると「株価はフリーキャッシュフローの成長に呼応する形で上昇する」ことが期待される。また、しっかりとキャッシュフローを生み出す力がある企業は、株主還元により株価を支える力も持っている。この戦略は、リターンのブレを抑えながら、市場平均を上回る収益の獲得を目指している。
◆世界で台頭する大潮流「メガトレンド」に注目
-企業の絞り込みで注目する点は
青木氏 景気の波を超えて企業が成長し続けるには、世界で台頭する「メガトレンド」に乗っているかどうか、が重要だ。当社では、世界の大きな変化に注目する「長期テーマ分析」を使って、約6000社の候補企業から、投資先を絞り込んでいる。
メガトレンドに注目することで、①景気サイクルではなく、構造的な要因でキャッシュフローを伸ばし続ける企業やビジネス分野を見つけ出す ②業種を超えて最も魅力的な銘柄を選定する ③ホームバイアスを脱して、地域横断的なバリューチェーンにおいてベストな銘柄を発見する-ことが可能になると考えているからだ。当社は現在、「環境技術」「消費構造の変化」「技術の進化」「インフラの高度化」をメガトレンドとして、サブテーマに落とし込み、個別企業を選定している。
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