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Sunday, May 15, 2022

打倒フェラーリ&ランボ! 新型「コルベット」はお値段半分以下でスーパースポーツとして一級品でした | VAGUE(ヴァーグ) - VAGUE

「C3」好きのモータージャーナリストが最新「コルベット」を試乗

 特徴的な四角いステアリングの左奥にあるスターターボタンをプッシュすると、最初の爆発が頭の後ろ側から快音となって伝わってきた。イタリア産のそれとは違い、過給器付きのそれとも異なる、自然吸気の大排気量V8ユニットのサウンドだ。

 聴き覚えがあるのにどこか少し締まったような音質にも思えるのは、排気の取り回しが大きく変化しているからか。いずれにしても、この時代にターボチャージャーもモーターも持たない6.2リッターのプッシュロッド・エンジンを奢ってくれたなんて、ファンにとっては喜び以外のなにものでもない。

高速道路に入っても、何ら変わることない心地好い乗り味
高速道路に入っても、何ら変わることない心地好い乗り味

●新章に突入した「コルベット」のエンジンとは

 ガッチリと身体を支えてくれるバケット型のシートから前を見渡すと、両側のフロントフェンダーが目に入る。これは伝統どおり。だが、その先に気持ちよく伸びていた長いノーズは、もう存在しない。あらためて、強く実感する。アイコンともいえるようなシルエットを捨てて、「コルベット」はミドシップ・レイアウトを選んだのだ、と。

 初代の「C1」を“スポーティカー”から“スポーツカー”へと仕立て直し、レースで通用するクルマであることを証明して、その後のコルベットのスポーツカーとしての資質にこだわり続けた“コルベットの育ての親”、ゾーラ・アーカス=ダントフの時代から、代が変わっても繰り返し繰り返しミドシップの研究車両を作ってはテストしてきたコルベットの開発陣たちの願いが、8代目となったこの「C8」にして初めて結実したカタチだ。

 これまでのロングノーズに後輪駆動というコルベットに憧れながら育ってきた世代──僕なんてモロにそうだ──にとっては寂しい大変革だし、世界中のファンからそうした声があがることは充分に解っていたはず。それでもこうしてメカニカルレイアウトを大きく変えてきたのは、開発陣が運動性能とトラクションに徹底的にこだわったことの、何よりの証なのだ。

 横に視線をやると、ダッシュボードから斜めに降りてくるサイドシートとのパーティションに、ズラリと空調などのスイッチが並んでいる。それも含めて、操作すべきもの、視認すべきものは、全てドライバーに向いている。まるで“おまえがいるところは操縦するための場所なんだぞ”と念押しするかのように。そんなところからも、シボレー・コルベットというアメリカが誇る伝統的なスポーツカーは完全に新しいチャプターに突入してるんだ、という作り手たちの声が伝わってくる。

 そう、今さらながらではあるのだけど、8世代目となった新型コルベットは、何から何まで新しい。シャシはアルミダイキャスト製の複数の部材を組み合わせたスペースフレーム構造となり、フロアやスカットルにはマグネシウムやカーボンなどの軽量素材が用いられ、軽さも強さも増している。

 サスペンションはダブルウィッシュボーンであることに変わりはないが、樹脂製の横置きリーフスプリングをヤメて、一般的といえるコイルスプリングになった。マグネティックライドダンパーは最新のヴァージョンへと進化し、ウェザー、ツアー、スポーツ、トラック、各パートを好みに設定できるマイモードという5つのモードを持つドライブモードセレクターと連動し、さらにはリア側の負荷をセンシングしながらダンピングレートを絶えず最適化してトラクションへと結びつける機能も備わった。

 エンジンは従来のLT1型をベースにしながらドライサンプ化はじめ様々な改良が加えられたLT2型へ発展し、最高出力は35ps以上も高い502ps/6450rpm、最大トルクは7Nm大きい637Nm/5150rpmに引き上げられた。トランスミッションは8速のトルクコンバーター式から同じ8速のデュアルクラッチ式へと切り替わった。車体のレイアウトが変わったこともそうだけど、あらゆるところから走りを磨き抜いてきた匂いがプンプンと漂ってくる。

 とはいえ、コルベットがパフォーマンスだけに特化したスポーツカーに変貌を遂げたわけじゃない、ということは走り出してすぐに判る。走行モードをツアーにしておく限り、拍子抜けするくらい快適なのだ。乗り心地がいい、という言葉を使っていいレベル。

 余力がたっぷりとあるパワーユニットは低速域でも厚みのあるトルクを当たり前のように提供してくれるし、8速DCTもこのモードでは早めのシフトアップを心掛けるような穏やかさを見せるから、都内の移動では2000rpmまで回さなくても事足りてしまう。ゆえに──標準装備のカーボン製ルーフパネルをはずさない限り──車内は静か。エンジンを背負って地ベタのすぐ上を座りながら滑っていくような尖った姿のクルマの中に自分がいるという事実に、軽い違和感を覚えるほどだ。

 こうしたレイアウト/スタイリングのクルマの場合、後ろや斜め後ろの視界が犠牲にされてても不思議はないところだが、コルベットのルームミラーはデジタル式。何にも遮られない映像を見せてくれるから、後方のクルマの動きが掴みやすい。サイドミラーも合わせて、斜め後方までしっかりとチェックできるのはありがたい。これまで好きになれなかったデジタルミラーだが、だいぶ見直した。この手のクルマにはベストマッチだと思う。

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