アメリカのキャンピングカーというと「大きい」「豪華」というイメージを持たれがちです。
実際、現行の多くのモデルが日本で登録可能な全長12m以内×全幅2.5m以内(特殊車両を除く)という枠を超えてしまうビッグサイズですから、やむを得ないかもしれません。
ビッグサイズが主流のなかで、フォードのトランジットをベースにした小型のクラスCは、手ごろなサイズ感と燃費のよいターボディーゼルエンジンを搭載し、日本でも人気がありました。
ところが、そこへ起きたのが新型コロナウイルスの感染拡大です。海外旅行が困難になったことなどを受け、アメリカで空前のキャンピングカーブームが巻き起こりました。
すると、現地のビルダーは、より利益率の高いモデルにシフトしました。高額商品に生産を集中するため、モデル整理をはじめたのです。
結果として小型のクラスCはラインアップから姿を消してしまいました。日本向けに小型商品を作ってほしいと頼んでも、対日輸出量は、アメリカのマーケットに比べればたかが知れています。こうしてアメリカ製キャンピングカーは、日本にほとんど入って来なくなりました。
そんな中、米ウィネベーゴ社の正規代理店である「ニートRV」から登場したのが、アメリカのバンコンともいえる「ウィネベーゴ ソリス59P」です。日本でも登録が可能なサイズです。
(トップ写真=大きく開くポップアップルーフが特徴の外観。ぱっと見は、フィアット・デュカトと見分けがつかないが、このポップアップルーフ、一般的なタイプとはちょっと違う/写真提供=Winnebago Ind.)
外見はアノ車にそっくり?
アメリカではバンコンのことを「クラスB」と言います。商用バンをベースに架装を行うのは日本のバンコンと同じです。
今回紹介するソリスのベース車はラム・プロマスターです。ラムは日本ではあまりなじみのないブランドですが、クライスラーの商用車部門のことです。
このプロマスター、外見はフィアット・デュカトにそっくりです。というのも、クライスラーは今やフィアットグループの傘下にあり、プラットホームを共通化したためにボディーも流用しています。デュカトとプロマスターは兄弟車というわけです。
ただ、外見こそ似ていますが、中身は全く違う車です。駆動方式こそどちらもFFですが、プロマスターのエンジンは3600ccガソリン。これに6速オートマチックトランスミッションが組み合わされています。
気になる車両サイズは全長6050mm×全幅2070mm×全高2720mm。全長を除けば国産キャブコンとさほど変わりません。ただしホイールベースが4040mmと長いため、最小回転半径が7.13mと大きめ(日本車ではトヨタ・コースターの超ロングボディー車とほぼ同じ)。そのため、取り回しには少々慣れが必要かもしれません。
ゆったりとしたレイアウト
室内レイアウトを見てみましょう。
運転席・助手席を回転させ、2列目シートと向かい合わせにしてダイネットを形成します。車体中央部にはキッチンとトイレルームが、後部には常設ベッドという構成です。運転席と助手席を利用するにあたり、コンパクトな居室を上手に生かしています。
そしてこのソリス、アメリカのキャンピングカーには珍しくポップアップルーフを持っています。しかしこのポップアップルーフも、一般的なものとはちょっと違います。
一般に、ポップアップルーフというと、居室部分の屋根(天井)が持ち上がり、「天井高が高くなる」イメージだと思います。そして寝る時には天井だった部分に板を渡してベッドを作るのが一般的です。
しかしソリスの場合、ポップアップルーフを持ち上げても、居室内の天井高は変わりません。ポップアップルーフ部分はいわば「屋根裏部屋」になっていて、そこへ登るための開口部が開くだけなのです。
そのため、ベッドを作るために板を渡す必要もありません。ただポップアップルーフを持ち上げて、人間はハシゴをよじ登るだけでいいのです。これでリアベッドに2名、ポップアップベッドに2名で就寝定員は4名です。
「じゃあ、室内は狭いんじゃないの? 中で立てないでしょう」とお思いでしょう。しかし、デュカトと同じボディーを使っているプロマスターのハイルーフを使用していますから、ポップアップルーフに関係なく、室内高は1850mm。大人が立って過ごせる十分な高さがあります。
ポップアップルーフがついていることを除けば、ヨーロッパのデュカトベースバンコンでもよくあるレイアウトです。しかし、全長6mありますから、ヨーロッパ車よりもさらにゆったり感があります。
充実した装備と手ごろなサイズ感
もう少し細かな装備に目を向けてみましょう。
トイレは汚水タンクが取り外しできるカセット方式です。アメリカ製キャンピングカーとしては珍しいですね(排水を入れるためのグレータンクは固定式です)。
車内にシャワールームがなく、代わりに温水シャワーがサイドドアとリアドアの両方に準備されています。つまり、設備の整ったRVパークではなく、サーフィン、キャンプなどスポーツの現場やアウトドアのフィールドで使うことを前提にしているように思えます。
最近は「豪華」な方向へと舵(かじ)を切っていたアメリカのキャンピングカー業界ですが、ソリスは「動く豪邸」とは全く違うアプローチとなっています。充実した装備と手ごろなサイズ感を生かして、アクティブに使うのが似合いそうな一台です。
PROFILE
からの記事と詳細 ( キャンプやスポーツでアクティブに使いこなすのが似合う1台 「ウィネベーゴ ソリス59P」 - 朝日新聞デジタル )
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