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Saturday, August 20, 2022

日本は「自分たちが飢える」可能性に備えているか - 東洋経済オンライン

食料危機

日本の食料政策の弱点はどこにあるか(写真:sogane/PIXTA)

ロシアのウクライナ侵攻で一気に深刻化した世界的な食料危機。主食の米を減らし続け、食料の多くを輸入に頼る日本も例外ではない。とりわけ、台湾有事でシーレーン(海上交通路)が封鎖されたときのことをどれだけ想定できているのか? 元農林水産省官僚で経済学者・農政アナリストの山下一仁氏が警告する著書『日本が飢える! 世界食料危機の真実』より一部抜粋、再構成してお届けする。

最低限必要な食料生産はどれくらいか?

まず、輸入途絶という危機が起きたときに、国民が餓死しないために、どれだけの食料(特に、米、小麦などカロリーを供給する穀物)が必要なのだろうか?

小麦も牛肉もチーズも輸入できない。トウモロコシや大麦も輸入できないので、日本の畜産は壊滅する。輸入物だけでなく、国産の畜産物、牛肉、豚肉、鶏肉、卵、牛乳・乳製品も食べられない。豊かで健康な食生活は、あきらめるしかない。生き延びるために、最低限のカロリーを摂取できる程度の食生活を送るしかない。具体的には、米とイモ主体の終戦後の食生活に戻るしかないのだ。

当時の米の一人一日当たりの配給は標準的な人で2合3勺(330g/一時2合1勺に減量)だった(子供は減量され、炭鉱労働などカロリーを多く使う者には加配された)。年間では120㎏である。今、これだけの米を食べる人はいない。2020年の一人一年当たりの米消費量は50・7㎏である。

しかし、1億2550万人に2合3勺(15歳未満を半分と仮定)の米を配給するためには、玄米で1500万〜1600万トンの供給が必要となる。しかし、農林水産省とJA農協は、自分たちの組織の利益のために、減反で毎年米生産を減少させ、2022年産の主食用米はピーク時の半分以下の675万トン以下に供給を抑えようとしている。今輸入途絶という危機が起きると、エサ米や政府備蓄の米を含めて必要量の半分に相当する800万トン程度の米しか食べられない。

現在、政府は配給通帳を用意していない。食料危機が起きてから、1億2550万人用に印刷して配布したのでは、危機対応に間に合わない。配給制度がなかったら、どうなるだろうか? 価格は高騰する。その価格で購入できる資力のある人たちは、2合3勺以上の米を買うだろう。この場合、半分以上の国民が米を買えなくなり、餓死する。その前に、米倉庫に群衆が押し寄せ、米は強奪されるだろう。米騒動の再来である。しかし、運よく入手した人も、いずれ食べる米に事欠くようになるだろう。

国民の半分に2合3勺を配給して、残りの半分に全く配給しないとして、やっと国民の半分は生き残れる。それでも約6000万人が餓死する。しかし、ある人に配給して、ある人に配給しないことは、政府が生存者を選別することになるので行えない。危機が一年間続くという最悪の事態を想定すると、全ての人に2合3勺(年間120㎏)の半分の1合1勺(年間60㎏)を配給するしかない。これで生存できる人は、他に食料を入手するすべを持っているなど、極めて幸運な人だけである。

あるいは、とりあえず2合3勺を配給して、米の在庫が尽きたときは、その時点で何らかの供給手段を考えるという楽観的なシナリオを政府が考えるかもしれない。しかし、半年くらいあとに米の在庫がなくなったとき、他の供給手段がなければ、国民全員が飢えるしかない。終戦直後の場合には、アメリカから援助物資が届いたが、シーレーンが破壊され続ければ、輸入はできない。

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