ベンチャー企業・oViceに勤務する薬袋(みない)友花里さん。写真は小樽でのワーケーションの際のもの。
提供:薬袋さん
「屋久島でワーケーションしたとき、テレワーク場所からちょっと足をのばせば鬱蒼(うっそう)としたコケの海があって、癒され方が違いました。
家にいると夕食後でもだらだらと仕事をしてしまうこともありますが、屋久島にいると夕方には静まりかえるので、自然とメリハリがつけやすい。今はワーケーション熱がどんどん加速しています」
仕事(ワーク)と休暇(バケーション)を組み合わせた「ワーケーション」。
新型コロナウイルスの影響による緊急事態宣言などで、一時は下火になったものの、逆にリモートワークが普及したことで改めて関心が高まっている。
そんなリモートワークを存分に満喫している夫婦がいる。
バーチャルオフィス事業を展開するoVice(オヴィス)で働く薬袋(みない)友花里さん(35)は、パートナーと共に1年の約半分を、全国でワーケーションしながら働いている。
oViceは8月31日に総額45億円の資金調達を発表するなど、急成長を続ける企業でもある。そんなスタートアップで働きながらのーケーション生活とはどんなものなのか?
きっかけは福岡ワーケーション
金沢でのワーションの一コマ。ホテルのコワーキングスペースでテレワーク中。
提供:薬袋さん
薬袋さんがワーケーションにはまったきっかけは、前職で大手航空会社に勤務していた約2年前にさかのぼる。
薬袋さんのパートナーである30歳代前半のシュウヘイさん(仮名)と2人で一緒に行った福岡旅行の際、1日をワーケーションにあててみたという。
「カレンダー上は飛び石連休になっていたので、平日の中日を、有休ではなく勤務日にして、ホテルの2階にあったコワーキングスペースで仕事をしました。
もともと旅先で仕事をすることに抵抗があった方なのですが、試しにやってみたら普通に仕事ができましたし、ランチは福岡グルメ、夜は観光もできて、『こんな働き方もありだな』と思うようになりました」
その後、シュウヘイさんはフルリモート勤務の関東のスタートアップ企業に転職。薬袋さんも「フルリモート」で働けること条件に転職先を探しoViceに入社した。
「転職した当時から、今みたいなワーケーション生活を考えていたわけではなかったのですが、どこからでも働ける会社がいいと思っています。
私は山梨の実家も大好きだし、国内外に行ってみたい場所もまだまだある。住む場所をいつでも自由に選びたいという気持ちが強いんです」
目的地から目的地へ「はしごワーケーション」
薬袋さんが沖縄でのワーケーション中に撮影したヤンバルクイナ。早朝にヤンバルクイナを探しに出かけ、その後、朝はいつも通りオンライン出社したという。
提供:薬袋さん
現在、薬袋さん夫婦の拠点はシュウヘイさんの実家がある神戸市だ。
シュウヘイさんの親族が所有していた家を借り、出張やワーケーションがない時は神戸で生活している。
ワーケーションをするときは、金曜の夜や土曜日に滞在先に移動し、平日は午前9時頃から午後6時頃までコワーキングスペースなどでいつも通り仕事に向かう。
最近では、滞在先から自宅に戻らず、そのまま滞在先から滞在先に向かう「はしごワーケーション」をすることもある。
薬袋さんは今年6月、京都から直接、北海道の利尻島に移動し、計2週間のワーケーションを実践。7月には沖縄・那覇の出張に合わせ、約2週間のワーケーションをした。
他にも過去、北海道では札幌、釧路、富良野、阿寒湖、山梨、長野、石川などで、コロナの感染状況をみながらワーケーションをした。
「去年、コロナが落ち着いていた時期の沖縄に行ったときは、平日の朝4時からヤンバルクイナを探しに行って、9時にはオンライン出社しました。
これまでのワーケーションで私が一番気に入っているのは利尻島です。実はそれまで地方での暮らしに興味がなかったのですが、島のゆっくり流れる時間が大好きになりました」
自治体の補助制度も活用
釧路では地元の市場で食材を購入。「地元の市場やスーパーに行くのが楽しい」と薬袋さんはいう。
提供:薬袋さん
キッチン付きのコンドミニアムに宿泊することが多いという。
提供:薬袋さん
気になるのはワーケーションの費用だ。
薬袋さん夫婦の場合、拠点となる神戸の家は親族から借りたため、家賃負担は少ない。前職時代には2人とも東京で生活をしていたが、高い家賃を支払って東京に住むことに疑問もあったという。
「私たちの場合は家賃のアドバンテージも大きいですが、ワーケーションにかかる費用は、都内で住む家賃を考えるとむしろ安いと思っています。
私たちの場合は滞在先で自炊することも多い。スーパーで地元の食材を買って料理するのは楽しいですし、外食するよりも安く抑えられます」
宿泊費を安く抑える方法も活用している。
人口減少や過疎化に悩む地方自治体の中には、自治体が主導して低価格でのワーケーションプランを提供したり、助成金制度を設けたりするケースもある。薬袋さんが利尻島の利尻富士見町にワーケーションしたときには、宿泊施設を1泊4000円(2LDKの場合)で利用できるなどの特典がある「ワーケーション・お試し暮らし事業」を利用したという。
自治体だけでなく、民間宿泊施設でも1泊数千円で宿泊できるワーケーション用プランを提供するケースも増えているという。
大事なのは宿泊先選び
利尻島のコンドミニアムで仕事をする様子。
提供:薬袋さん
どこに宿泊するかは、ワーケーションの成否を分けるポイントでもある。
「これまでの経験上、働く前提できているのに、ワークよりもバケーションに重きを置いているプランもあるので、事前にきちんと確認することをおすすめします」
最近では、電源やWi-Fiがあるテレワーク用の施設を紹介してくれるケースも多いものの、ワーキングスペースが使える時間が午後からだったり、夕方すぐにクローズしてしまったりすることもあるという。
「チェクアウトしたらもう作業スペースが使えないこともありました。その経験をした後は特に徹底的に調べるようになり、自治体から出されている情報だけでなくSNSやブログなどもよく見ています。
仕事環境をベースに情報を拾っていくことが大事だと思います」
「夫婦ワーケーション」の良さ
休日、屋久島トレッキングで見た縄文杉。
提供:薬袋さん
良いこと尽くめに聞こえるワーケーション生活だが、急成長するベンチャー企業・oViceで働く薬袋さんの日常は多忙だ。
広報担当としてメディア取材の調整はもちろん、多い月にはサービスに関するプレスリリースを「2日に1本」発表。他にも社長のプレゼン資料を作ったり、oVice導入会社のサポートを担当したりすることもあった。
8月末に発表した資金調達の時には、アメリカ向けにもプレスリリースを発表。現地での発表は日本時間の夜10時だったため、薬袋さんは深夜にフォローする必要があったという。
「正直、やるべきことはいつも山積みです。今は海外に住む外国籍の社員も含めて、社員は100人以上にまで増えていますが、ベンチャーあるあるとして、担当を超えていろいろな業務をみんなで担当している感じです」
そんな多忙な状況ながらも、ワーケーション生活を続けられるのは「忙しい時には互いにサポートできているから」と薬袋さんは言う。
阿寒湖では湖上に霜が花のような形になる「フロストフラワー」も撮影できたという。
提供:薬袋さん
「基本的に家事は分担していますが、ワーケーションではより近い場所で働くことが多いのでフォローがしやすい。
忙しいときには代わりに食事を作ったり、洗濯を代わってもらったりできるので、お互いに仕事にも集中できます。夫婦ワーケーションならではの良さかもしれません」
一方のシュウヘイさんにとっても、ワーケーション生活は充実しているという。
「夫婦でワーケーションする良さは、経験が広がる事だと思っています。僕はワーケーション先として都市を選びがちですが、パートナーは僕が選ばないような自然豊かな土地を選ぶので新鮮です。
僕の場合、仕事はどこにいようと、9時から18時と決めているので、家でもワーケーションでも仕事の効率は全く変わりません。ワーケーションに向いているタイプだと思います」(シュウヘイさん)
薬袋さん夫婦は来年、カナダで1週間、初めての海外ワーケーションも計画している。
「オーロラを待つ時間を使って、テレワークできたら面白いなと思っています」
(文・横山耕太郎)
からの記事と詳細 ( 1年の半分をワーケーションする「フルリモート夫婦」。急成長ベンチャーで働く日常とは - Business Insider Japan )
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